新たなテニス環境開発の歩み  The step that created new tennis environment

   テニスコート上とは違った形で、さわやかなスポーツ心の存在が 各地の様々な場所や環境の中にあります・・
  
 
身体や心身面に障害がある人達は、通常の体力をもつ人達に比べ、生活の一部に介助を必要とすることが多々あります。 特に障害レベルが重度の人達は、家庭の中で家族などの介護努力のみでその健康を維持することはむずかしく、公的または民間の福祉施設に入所するケースが増えています。 

各施設の中で、身体障害、心身障害のハンディを乗り越えようとしてがんばっている人達がおります。 その人達が、生活環境がスポーツとはかけ離れていても、身体を動かすことがどんなに大変であっても、参加してみたいスポーツや楽しんでみたいことが声には出せなくても沢山あるものです。

重度障害の人達には、スポーツ参加の機会が少ないのは、当時も今も同じです。
周囲や関係方面も理解が少ないことに起因していますが、風船バレーなど軽いゲームなどは認められても、一般的なスポーツ参加は困難と決めつけられている人達を対象にしたテニスを提案しても・・ 周囲の関係者からは・・無理です・・との回答が、連絡を差し上げた国内各地の施設からありました。 

しかし、施設職員など関係者の中には、むずかしいとは思うが・・実施してみなければ分からない! と思う人達も存在していました。 入所している重度障害の人達を毎日サポートしながら、日々の生活を少しでも豊かになることを願っていたのでしょう。

こうした・・無理! との回答も・・ しかし、やってみなくては! との考え方も、初めて、車椅子テニスの提案や全盲の人達のテニスを提案したときと同じです。
既存の考え方に偏っていては、スポーツも科学や医学、社会環境も進歩しないことを歴史が物語っているのですが・・

ラケットを握ることもむずかしい重度障害の人達にも、テニスの楽しさに接する機会を考えてみようとした関係者との出会いが各地で実現したことは幸いでした。
テニスを既存のカタチとは異なる別な切り口で開発を進めたユニバーサルテニスは、さわやかなスポーツ心を様々な環境の中で発掘することを可能にしました。

重度の身体障害ハンディのある人達も参加することのできるスポンジテニスプログラムを開発して (当初の名称はスポンジテニス21→ 近年 S・ST に改称)
このプログラム紹介に身体障害者療護施設の峰岡園(千葉県鴨川市)を訪ね、年6〜8回の定期企画活動としてして練習指導を進めました。

訪問のきっかけは、脊髄損傷の障害で施設の中で生活していた青年からの手紙でした。
この施設訪問は1989年 〜1997年まで 一時中断した期間も含まれますが、テニスの楽しみ方を紹介する活動は継続しました。

 公営施設 30,523ヶ所 (定員 1,239,242人)  私営施設 45,352ヶ所 (定員 1,586,787人)  ※参考文献  平成14年度版 厚生労働白書から
   こうした施設は、残念ながら福祉施設の数と定員は 入所を希望する人達の数を大きく下回っています。

定期的に訪問した1施設に加えて、1994年 〜1995年の間、国内各地の身体障害者療護施設を訪問して スポンジテニス講習を 実施しました。
訪問地域は、新潟、長野、兵庫、福井、北海道、千葉、高知、鹿児島、埼玉などの11施設、沖縄方面施設は1999年に訪問しました。

1997年には、大分県内の身体障害者療護施設に加えて、知的障害の施設と高齢者施設を訪問、沖縄では、虐待から避難保護施設の児童達を訪ねました。
施設の子供達は、最初は知らない人達の訪問に警戒感がありましたが、スポンジテニス練習を続ける中で、次第に笑顔が増えていったことは嬉しいことでした。

     


お訪ねした施設の関係者から、このスポーツ紹介について 感想をお寄せいただきました。

 
 ハンディキャップテニスのラリーから得られるもの・・・              身体障害者療護施設 寮父  永井広雄さん

私達の施設では、ハンディキャップテニスを知るまでスポーツらしいものはほとんど行っていませんでした。 実際、介助する側も入所者の側も、ボールを打ち返すこと、ましてやゲームでラリーをするなどは夢にも思っていませんでした。

ところが、ボランティアの丁寧で根気強い指導と、手の使えない人には足に、また、腕力のない人には卓球のラケットを手に結びつけるなど、指導する人達と試行錯誤をしながら続けたところ、なんと10回に1回は目の覚めるようなラリーが続けられるようになったのです。

そうなると入所者の方も真剣ですが、それ以上に介助者は手が抜けません。
車椅子を押したり、相手の打ちやすいところにボールを落としたり、打ったり、目の回るような思いです。
 ・・ですが・・ 実際のところ、ラリーができるのは 2、3人です。

脳性麻痺の方やリュウマチの方などはラケットを振れず、ラケットにボールを当てて感触を楽しむしかない方や、試合を見て応援するだけの人、ボールがうまく打てなくて、「つまらない」 と言って部屋に戻ってしまう人もいます。

しかし、スポーツをしている時のみなさんの笑い顔は他にないものがあります。  また、スポーツを通して自分への可能性を感じているようにも私には思えます。
ハンディキャップテニスでのラリーの時の心遣いや楽しさを忘れず、たくさんの障害者の方々との真剣で笑い声のあるコミニュケーションを 多くのみなさんといつまでも続けて行けたら、きっとすばらしい感動があると私は信じています。
 


  スポンジテニスは 障害のある人達が スポーツに親しむ窓口として 「すぐれもの」 です   身体障害者療護施設 職員  浜野直紀さん

週に一度のスポーツの時間、たくさんのボールをカゴに入れ、職員と園生とのテニスが始まる。 やわらかいスポンジボール、一般のものより柄の短いラケット、そのラケットをある園生は包帯で巻きつけ、ボールを追いかける。

何度ボールがきても素振りを繰り返す園生、ボールに当てることが彼女にとってスポーツだ。 うまく打ち返す者も、当てることに全勢力を傾ける者も、一様に充実した表情をしている。 どちらかというと、ネガティブになり勝ちな園生が、唯一アクティブになれる時間といえる。

最近、車椅子バスケット、車椅子テニスなど障害者のスポーツが注目されているが、どれを見ても身近なものとはほど遠い。バスケットができる体育館やテニスのできるテニスコートをもつ園(施設)は少ない。 ましてや、そうしたスポーツを障害の重い人達に指導するインストラクターなどは、ほとんど知らない。

そんな中、食堂でも、ちょっとした空き地でも手軽にはじめられるスポンジテニスは、障害のある人達がスポーツに親しむ窓口としては 「すぐれもの」 といえるだろう。 その普及に全力投入している人達を心から応援したい。


複合障害(数種類の障害がある)人達がおりますが、ラケットをタイミングよく動かすことができない機能障害が影響したり、視野の狭い弱視によってボールが視界から外れてしまうことで苦労することがあります。
しかし、スーパーテニスの内容はこうした人達もテニス参加の楽しさを実感できる空間を容易に育んでいます。
この複合障害ハンディを超えて練習、手く打球できたときに素敵な笑顔を見せる人達に出会いました。
発声機能にも障害のある彼女は周囲の人達と会話するときに特製ボードを使用します。文字を指差して自分の意志を周囲に伝えていました。 特製ボードは施設職員の手作りです。 施設の中に見た優しさのひとつです。
障害の重い人達の多い療護施設には車椅子使用の人達が数多くおります。 一方、杖を使用する人達や歩行器を用いる人達もいます。 障害の存在が生み出す内容はひとりひとりの個性を生み出します。 そうした個人のスタイルと残存機能を最大に活かす工夫が生まれ、共にテニス交流を楽しめます。
ラケットを足首に固定して打球を楽しむことができます。電動車椅子でなく車椅子移動を補助する人達を人動(?)エンジンとしてスーパーテニスは競技規定で認め、ゲーム参加も可能にしています。
障害のある人が動かし易い足の方向を考え、タオルと伸縮包帯などでしっかり固定してください。 ネットを越える打球に周囲から拍手が湧き上がる楽しいスポーツ空間です。
テニスの練習を楽しむ人達が増えるとネットセットが不足することもありますが、そのときは、椅子を並べて即製ネットとして楽しんでください。 費用負担を最小限に、みんながプレーのできる空間を増やして下さい。
お訪ねした国内数十ケ所の施設での練習場所の多くは食堂のフロアです。 また、スポンジボールの安全性と特徴は、幅のある通路でも楽しめます。

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