高齢者福祉施設の中に新しいレクリェーションスポーツの導入を ・・
楽しい軽スポーツ空間企画の手引き

身体に障がいのある人達も障がいのない人達も高齢となり、体力の衰えが著しくなると高齢者施設を利用したり、その施設に生活を移すケースが増えています。 日頃の生活を安全に静かに過ごすための良き生活パターンのひとつとされています。

施設の中で同年代の話し相手が見つかり、気心が合うと趣味を同じくしたりして充実した時間をもつ人達がおります。 しかし、各地の施設を訪ねますと、必ずしも全員が楽しい空間や時間を施設の中に見つけているとは感じられないこともあります。
施設内で感想を伺う機会は数少ないため、数名の人達の声と外観から見て、施設内の生活の充実度を正しく判断することはむずかしいところですが、十数名の方々の様子を拝見した中で、その表情と雰囲気から孤独の寂しさに耐えているような人達が少し見られたことは気懸りです。

施設をお訪ねしてボランティア・スタッフが紹介したのはスポーツプログラムです。 介護を必要とする人達にスポーツ参加の体力は少ない?・・ と思われ勝ちなのですが、特別養護老人ホームなど各施設で生活される70代、80代の高齢者の中に、ラケットを握りしめた後の動作と表情が大きく変わり、ボールを打とうとする意欲に満ちた態度にパッと変わったことに驚かされました。

施設の寮母さんや指導員からは多くの高齢者と日頃から接していると、ひとりひとりの考え方や個性が異なるように、体力も人それぞれに大きな違いが見られる中、各施設で用意しているレクリェーションプログラムの種類が少なく、数十名の高齢の人達すべてが満足できる内容としては不十分とのことでした。 そうした環境の中で紹介しましたスポンジテニスプログラムは多くの人達に好評でした。 

はじめての機会でしたので、ラケットをもつことを遠慮する人達も多かったのですが、そうした雰囲気の中で他の人達が空振りしたりしながらも懸命に打とうとする動作を笑顔で見守っていたのが印象的です。 多分、こうした機会が増え、周囲の人達からの誘いの声が多ければ、次回には打球することにチャレンジされるようになるかもしれないと感じました。

高齢の人達や体力の弱くなった人達の中にも身体を動かすことを好む人達が数多くおりますが、運動量が大きいと思われているスポーツへの参加は避けられ勝ちです。 この考え方を見直して、周囲の人達が安全に気をつけることを第一とすれば、従来まで無理と考えられていたスポーツ参加を親しむ空間を施設の中につくり出すことができます。 健康と安全に留意することは大切なのですが、過大に心配することで、平均年齢よりも体力が多くある人達に対しても一律に運動量を制限してしまう考え方に対して、身体を動かす楽しさなど新しい視点の取り組みも必要と考えます。

ひとりひとりの体力の違いと本人が関心をもつ内容を考慮した上で新しいプログラムを施設の中に導入すれば、同じ施設で長く生活する高齢者やディサービスを楽しみに利用される人達のQOL(生活の質)を更に高めることが出来ると思います。
施設レクリエーションのひとつにスポーツプログラムを加え、選択できる楽しさの空間を増やしてみてはいかがでしょうか。 使用されるラケットは市販のスポンジテニス用ラケットを使用する他に、卓球用ラケットや幼児用の玩具タイプのラケットも活用できますので、体力の著しく小さな人達も一緒に楽しむことが可能です。

このプログラムは体力の大小に関係なく参加できると同時に、施設職員やボランティアの人達も目線の高さを同じくしてゲームの面白さを競うことができますので、ラリーを通じたコミュニケーションを増やすことができます。
元気な人達、明るい人達の笑い声に満ちた施設づくりにスポンジテニスの楽しさをご活用下さい。
日本ハンディキャップテニス連盟では施設のスポーツ導入に際しての助言と講師派遣を行っています。

 ●次の施設に導入をお薦めします。
軽費老人ホーム 養護老人ホーム 特別養護老人ホーム
老人福祉センター 老人介護支援センター 老人デイサービスセンター

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