コートの外のスポーツ心を育む

身体や心身面に障がいがある人達は、通常の体力をもつ人達に比べ、生活の一部に介助を必要とすることが多々あります。
特に障がいレベルが重度の人達は、家庭の中で家族などの介護努力のみでその健康を維持することはむずかしく、このため、公的または民間の福祉施設に入所するケースが増えています。 国内の社会福祉施設は民間の福祉施設が公的な施設に比べるとその施設数も利用者定員も上回っている現状にあります。

民間福祉施設の場合、その建設と運営の一部に公的な助成制度を利用することができますが、建設の第一歩は福祉に理解のある民間の人達が、個人として所有している土地の提供を図り、建設費の一部を負担できる力があることで施設建設が具体化すること多く、公的な行政施策による建設計画と違い、私財、資産を投じる個人や団体の努力に支えられています。
いろいろな社会状況の中で建設された福祉施設は、その内容が大きく分類されています。 更生施設、生活施設、作業施設、地域利用施設などがあり、ここでは障がいのハンディをもつ人達が生活されている身体障がい者療護施設をお訪ねしたレポートをご紹介します。

身近ないろいろな福祉施設をお訪ねして、新しいスポーツ空間をその施設の中に育んでみられてはいかがでしょうか。 こうしたボランティア活動は、出来れば毎月1回でも継続できる企画として当該の施設と実施方法などを相談し、施設の人達が楽しみにされるような企画として定着したら、素晴らしいですね。

 ●公営施設 30,523ヶ所 (定員 1,239,242人)  ●私営施設 45,352ヶ所 (定員 1,586,787人)  ※参考文献  平成14年度版 厚生労働白書の平成12年度資料
   こうした規模にありますが、残念ながら福祉施設の数と定員は入所を希望する人達の数を大きく下回っています。

  
お訪ねした施設の関係者から、このスポーツ紹介について感想をお寄せいただきました。

 ● ハンディキャップテニスのラリーから得られるもの・・・              身体障害者療護施設 寮父  永井広雄さん

私達の施設では、ハンディキャップテニスを知るまでスポーツらしいものはほとんど行っていませんでした。 実際、介助する側も入所者の側も、ボールを打ち返すこと、ましてやゲームでラリーをするなどは夢にも思っていませんでした。
ところが、ボランティアの丁寧で根気強い指導と、手の使えない人には足に、また、腕力のない人には卓球のラケットを手に結びつけるなど、指導する人達と試行錯誤をしながら続けたところ、なんと10回に1回は目の覚めるようなラリーが続けられるようになったのです。

そうなると入所者の方も真剣ですが、それ以上に介助者は手が抜けません。  車椅子を押したり、相手の打ちやすいところにボールを落としたり、打ったり、目の回るような思いです。 ですが・・ 実際のところ、ラリーができるのは 2、3人で、脳性麻痺の方やリュウマチの方などはラケットを振れず、ラケットにボールを当てて感触を楽しむしかない方や、試合を見て応援するだけの人、ボールがうまく打てなくて、「つまらない」 と言って部屋に戻ってしまう人もいます。

しかし、スポーツをしている時のみなさんの笑い顔は他にないものがあります。  また、スポーツを通して自分への可能性を感じているようにも私には思えます。 ハンディキャップテニスでのラリーの時の心遣いや楽しさを忘れず、たくさんの障がい者の方々との真剣で笑い声のあるコミニュケーションを多くのみなさんといつまでも続けて行けたら、きっとすばらしい感動があると私は信じています。

 

複合障がい(数種類の障がいがある)人達がおりますが、ラケットをタイミングよく動かすことができない機能障がいが影響したり、視野の狭い弱視によってボールが視界から外れてしまうことで苦労することがあります。
しかし、スーパーテニスの内容はこうした人達もテニス参加の楽しさを実感できる空間を容易に育んでいます。
この複合障がいハンディを超えて練習、手く打球できたときに素敵な笑顔を見せる人達に出会いました。
発声機能にも障がいのある彼女は周囲の人達と会話するときに特製ボードを使用します。文字を指差して自分の意志を周囲に伝えていました。 特製ボードは施設職員の手作りです。 施設の中に見た優しさのひとつです。
障がいの重い人達の多い療護施設には車椅子使用の人達が数多くおります。 一方、杖を使用する人達や歩行器を用いる人達もいます。 障がいの存在が生み出す内容はひとりひとりの個性を生み出します。 そうした個人のスタイルと残存機能を最大に活かす工夫が生まれ、共にテニス交流を楽しめます。
ラケットを足首に固定して打球を楽しむことができます。電動車椅子でなく車椅子移動を補助する人達を人動(?)エンジンとしてスーパーテニスは競技規定で認め、ゲーム参加も可能にしています。
障がいのある人が動かし易い足の方向を考え、タオルと伸縮包帯などでしっかり固定してください。 ネットを越える打球に周囲から拍手が湧き上がる楽しいスポーツ空間です。
テニスの練習を楽しむ人達が増えるとネットセットが不足することもありますが、そのときは、椅子を並べて即製ネットとして楽しんでください。 費用負担を最小限に、みんながプレーのできる空間を増やして下さい。
お訪ねした国内数十ケ所の施設での練習場所の多くは食堂のフロアです。 また、スポンジボールの安全性と特徴は、幅のある通路でも楽しめます。
施設関係者からのレポートをもうひとつご紹介します。

 ● スポンジテニスは 障がいのある人達が スポーツに親しむ窓口として 「すぐれもの」 です  身体障害者療護施設 職員  浜野直紀さん

週に一度のスポーツの時間、たくさんのボールをカゴに入れ、職員と園生とのテニスが始まる。 やわらかいスポンジボール、一般のものより柄の短いラケット、そのラケットをある園生は包帯で巻きつけ、ボールを追いかける。

何度ボールがきても素振りを繰り返す園生、ボールに当てることが彼女にとってスポーツだ。 うまく打ち返す者も、当てることに全勢力を傾ける者も、一様に充実した表情をしている。 どちらかというと、ネガティブになり勝ちな園生が、唯一アクティブになれる時間といえる。

最近、車椅子バスケット、車椅子テニスなど障がい者のスポーツが注目されているが、どれを見ても身近なものとはほど遠い。バスケットができる体育館やテニスのできるテニスコートをもつ園(施設)は少ない。 ましてや、そうしたスポーツを障がいの重い人達に指導するインストラクターなどは、ほとんど知らない。

そんな中、食堂でも、ちょっとした空き地でも手軽にはじめられるスポンジテニスは、障がいのある人達がスポーツに親しむ窓口としては 「すぐれもの」 といえるだろう。 その普及に全力投入している人達を心から応援したい。